「生前贈与加算のルールが3年から7年に延長されました」——法律事務所のサイトで、この一文をよく見かけます。ですが国税庁の一次情報を確認すると、実は2026年末までに発生する相続については、加算期間はまだ「3年」のままだとご存知でしょうか。すべての相続で7年になるのは、2031年1月1日以後に発生する相続からです。「7年ルール」という呼び方が先に広まり、施行スケジュールの複雑さが置き去りになっているテーマなのです。

本記事は、生前贈与加算という制度の個別相談を目的とした記事ではありません。この制度改正を題材に、「法律事務所が書く記事は、AIに“引用される情報源”として選ばれる書き方になっているか」を診断する記事です。THE WORLDは、AIO(AI最適化。ChatGPTやGoogleのAI Overviewのような生成AIの回答に、自社の記事が情報源として引用されやすくなるよう記事や構造を調整する取り組み)とLLMO(大規模言語モデル最適化。AIOとほぼ同じ意味で使われることが多い考え方)を専門とする福岡の会社です。今回は、経過措置が絡む複雑な改正テーマを例に、記事の書き方を一緒にチェックしていきましょう。

生前贈与加算「7年ルール」、実は今の相続はまだ3年のまま

まず事実関係を整理します。国税庁のタックスアンサー(国税庁が税法の取り扱いを一問一答形式で公開している公式ページ)No.4161によると、生前贈与加算のルールは次のように変わりました。

相続開始の時期加算対象期間
〜令和8年(2026年)12月31日相続開始前3年以内(改正前と同じ)
令和9年(2027年)1月1日〜令和12年(2030年)12月31日令和6年1月1日から死亡の日までの期間(3年超〜7年未満で段階的に延びる)
令和13年(2031年)1月1日以後相続開始前7年以内(フル適用)

あわせて、延長された4年分(相続開始前3年超〜7年以内)に受けた贈与については、その財産の贈与時の価額の合計額から総額100万円までが相続税の課税価格に加算されません(1年ごとではなく4年分合計での控除です)。また、加算対象になるのは「相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人」に限られ、加算する金額は贈与を受けた時点の価額です。

ここまでが法律事実です。この記事の本題は、ここから先——この事実を、AIに正しく引用される形でどう書くか、です。

なぜ「7年に延長されました」の一文だけでは、AIに拾われないのか

ChatGPTのようなチャット型AIやGoogleのAI Overviewは、質問が来るたびにウェブ上の記事を丸ごと読んでいるわけではありません。多くの場合、RAG(Retrieval-Augmented Generation、検索拡張生成)という仕組みを使っています。AIが回答を作る前に、記事を見出し・段落ごとの小さなかたまり(チャンクと呼びます)に分解して保存しておき、質問に関連するチャンクだけを呼び出して、それを材料に回答を組み立てる仕組みです。

ここで重要なのは、AIは記事全体ではなく、チャンク単位で情報を拾うという点です。仮に「生前贈与加算は7年に延長されました」という一文だけが単独のチャンクとして保存されていたとします。この一文には経過措置の情報(いつの相続から本当に7年になるのか)が含まれていません。AIがこのチャンクだけを引用すると、「今相続が発生しても7年分加算される」という誤った回答を生成してしまうリスクがあります。

つまり、条件(いつの相続開始か)と結論(何年分加算されるか)が同じ段落・同じチャンクの中に収まっているかが、AIに正確に引用されるかどうかの分かれ目になります。「7年に延長」という見出しの下に、経過措置の説明を離れた場所に置いてしまうと、AIから見れば両者はつながっていない別々の情報になってしまうのです。

「いつの相続か」を書き漏らすと、AIの質問一つで記事が脱落する

読者がAIに「生前贈与加算は今年相続が発生したら何年分加算されますか」と聞いたとします。このときAIは、一つの質問を内部でいくつかの小さな質問(サブクエリ、元の質問を分解して作られる、より具体的な検索用の質問のこと)に分けて処理することがあります。「生前贈与加算の年数は」「経過措置の内容は」「相続開始日ごとの適用期間は」といった具合です。

記事の中に「相続開始日ごとの加算期間」という切り口の情報がなければ、そのサブクエリに対応するチャンクが記事内に存在せず、AIの検索対象から外れてしまいます。「7年に延長されました」とだけ書いてある記事は、「7年になった理由」には答えられても、「今相続が発生したら何年分か」には答えられません。

法律事務所の記事でありがちなのは、改正の全体像だけを書いて、読者が実際に検索するであろう具体的なケース(今年相続が発生したら/来年発生したら等)を見出しとして独立させていないケースです。AIが分解しそうな質問のパターンを見出し単位で先回りしておくことが、複数のサブクエリに引っかかる記事を作る近道です。

「100万円控除」、結論を何行目に書いていますか

見出し設計には、AIに引用されやすくするための4つの原則があります。①見出しを疑問形にする、②1つの見出し(1セクション)で1つのトピックだけを扱う、③読者が検索しそうな具体的なサブクエリを見出しに反映する、④見出し直下の1〜2文で結論を先に書く(アンサーファースト、結論や要点を本文冒頭に先出しする書き方)——この4つです。

例えば「100万円控除」について、多くの記事では見出しの下にまず制度の背景説明から入り、控除額や条件は数段落後に出てくる構成になりがちです。これはAIにとって不利です。AIは見出し直下の数文を要約や引用の候補として優先的に拾う傾向があるため、結論が後回しになるほど引用されにくくなります。

Before(引用されにくい書き方)After(引用されやすい書き方)
見出し「延長された期間の負担軽減について」→背景説明が数段落続いた後に控除額が登場見出し「延長4年分の贈与、100万円控除の対象になりますか?」→直後の1文で「相続開始前3年超7年以内の贈与財産は、贈与時の価額の合計額から総額100万円まで加算対象外です」と結論を提示

見出しを疑問形にし、直後に結論を置く。この2点だけでも、AIが判断しやすくなります。

同じテーマの記事が複数ヒットしたとき、AIはどちらを選ぶか

生前贈与加算の7年ルールは、税理士事務所・法律事務所を含め非常に多くのサイトが記事化している競合の多いテーマです。AIが複数の候補記事の中から引用元を選ぶ際、RRF(Reciprocal Rank Fusion、複数の検索結果の順位を統合して最終的な順位を決める手法)という考え方が使われることがあります。キーワードの一致度と、意味的な近さなど、複数の評価軸それぞれの順位を組み合わせて、総合的に上位に来た情報を優先する仕組みです。

法律事務所の記事がこの土俵で選ばれるためには、税理士系サイトと同じ一般論を並べるだけでは不利になります。法律事務所ならではの切り口(遺産分割協議や遺留分の計算に生前贈与加算がどう関わるかなど)を独自トピックとして明確な見出しで立てることが、評価軸のどこかで上位に入る可能性を高めます。特別寄与料の請求期限を扱った記事でも触れた通り、税務の一般論に埋もれさせず、法律事務所ならではの専門性を見出しレベルで切り出すことが、競合の多いテーマでのAIO対策の基本です。

法律事務所の記事によくある「書き漏らしチェックリスト」

生前贈与加算の7年ルールを題材に、AIに引用されにくい記事に共通する落とし穴をチェックリストにまとめました。自社記事の見直しにお使いください。

  • 「7年に延長」という結論だけでなく、経過措置(いつの相続から何年分か)を同じ段落内に書いているか
  • 「今年相続が発生したら」「来年発生したら」など、読者が具体的に検索しそうなケースを見出しとして独立させているか
  • 見出しを疑問形にし、直後の1〜2文で結論(数字・条件)を先出ししているか
  • 100万円控除のような数字条件を、背景説明より先に提示しているか
  • 税理士系記事と同じ一般論だけでなく、法律事務所ならではの視点(遺産分割・遺留分実務等)を独立した見出しで扱っているか
  • 「贈与時の価額」「相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人」など、条件を省略せず正確な言葉で書いているか

よくある質問

Q1. 見出しを疑問形にするだけで、本当にAIに引用されやすくなるのですか?

A1. 疑問形にすること自体が目的ではありません。読者が実際にAIへ投げかけそうな質問の形に見出しを近づけ、直後に結論を明確に書くところまでがセットです。

Q2. 経過措置のような複雑な条件は、記事のどこに書くのが適切ですか?

A2. 結論となる見出しの直下、同じチャンク(段落のかたまり)に収めることをおすすめします。背景説明を先に書き条件を後回しにすると、AIが結論と条件を切り離して拾ってしまうリスクがあります。

Q3. 税理士事務所の記事と内容が似てしまう場合、どう差別化すればよいですか?

A3. 税務の数字説明自体は他サイトと重なっても問題ありません。重要なのは、法律事務所としての専門性(遺産分割・遺留分計算への影響など)を独立した見出しとして立てることです。制度説明に埋め込むと、AIが「他サイトと同じ情報」と判断し、選ばれにくくなります。

本記事は、生前贈与の相続財産加算ルールを題材に、AIO・LLMOの観点から「記事の書き方」を解説したものであり、個別の税務・法律相談やアドバイスを目的とするものではありません。実際のご相談は、税理士・弁護士等の専門家に直接ご確認ください。

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株式会社THE WORLD のAIO/LLMOチームマネージャー。福岡・天神を拠点に、AIO/LLMO対策やAI導入支援の現場で企業のAI活用を支援。生成AI時代に「選ばれ続ける」ための実践知を発信しています。