「家族信託」と「民事信託」。事務所サイトでは、どちらかに寄せて書かれます。2026年9月3日、弊社編集部はこの2語で検索し、上位16ページを突き合わせました。両方に出たのは13ドメイン中2つ。ところが本文を調べると、10ページは両方の語を書いています。「併記すれば拾われる」という処方が、自分の測定で崩れました。扱うのは信託の法律解説ではありません。事務所サイトの書き方を、AIO/LLMOの観点で解説します。
目次
呼び名が2つある理由と、「家族信託」を自社サイトで使ってよいのか
先に用語です。AIO/LLMOとは、AIが答えを作る検索への対策。ChatGPTや、Google検索の上部に出るAIの要約「AI Overview」が代表例です。従来のSEOは検索順位を狙い、AIOはAIの回答文に名前を出すことを狙います。基礎はAIO・LLMO・GEOとは?「AIにすすめられる会社」になるための基礎知識にまとめています。
2つの呼び名は、厳密には同義ではありません。民事信託が広い概念で、家族信託はその中心にあるケースです。営業で信託を引き受ける商事信託と対比した語が民事信託。そのうち家族に託すものが家族信託にあたります(東京弁護士会「商事信託と民事信託」)。
ただし検索窓では、ほぼ同じ意図で打ち込まれます。この「厳密には別、実務ではほぼ同義」という状態が機械にどう見えるか。それが本記事の主題です。
もう1点。「家族信託」は一般社団法人家族信託普及協会の登録商標です。
では自社サイトで使ってよいのか。答えは同じページにあります。趣旨を理解して正しく使う限り活動を制限するつもりはない、と協会は述べています。さらに「一般向けの説明資料等で使用されることについても特段の申請等は不要です」と明記。本記事で扱う書き方は、この範囲内です。
実測①:1語入れ替えたら、重なったのは13ドメイン中2つでした
2026年9月3日、弊社編集部が同じ構文で2回検索しました。クエリは「家族信託 手続き 弁護士 相談」と「民事信託 手続き 弁護士 相談」。違うのは冒頭の1語だけ。測定環境も書きます。検索エンジンのAPI経由で取得し、地域やログイン状態による調整はかかっていません。お手元のGoogleでは結果が変わります。
| 測定項目 | 「家族信託 手続き…」 | 「民事信託 手続き…」 |
|---|---|---|
| 取得した上位ページ | 8ページ | 10ページ |
| ユニークなドメイン数 | 7 | 8 |
| 上位を占めた発信者 | 法律事務所、司法書士、相続系ポータル | 日弁連・弁護士会、信託銀行、法律事務所 |
| 両方に登場したドメイン | 13ドメイン中2つ | |
合計18件、重複を除くと16ページ。「民事信託」側には日弁連や信託銀行が並び、「家族信託」側は法律事務所と司法書士が中心。顔ぶれの傾向まで割れました。母数は小さく断定はできません。それでも重なり2ドメインは、誤差で説明しづらい数字でした。
3日前の8月31日にも同じ2クエリで測りました。そのときは13ページ中1ドメイン。顔ぶれは3日で入れ替わっても、重なりがごく少ない構造は同じでした。
実測②:ところが10ページは、本文に両方の語を書いていました
ここで手を止めました。「片方の語しか書いていないから拾われないのだろう」。そう書こうとして、確かめていないと気づきます。16ページのHTMLを取得し、2語の出現回数を数えました(ナビ等を含むページ全体が対象。1本は日弁連のPDF資料のため除外)。
| ページの例 | 「家族信託」 | 「民事信託」 | どちらの検索に出たか |
|---|---|---|---|
| 相続系ポータルA | 129回 | 2回 | 両方 |
| 法律事務所B | 25回 | 28回 | 民事信託のみ |
| 弁護士会C | 0回 | 16回 | 民事信託のみ |
| 相続メディアD | 29回 | 1回 | 民事信託のみ |
| 法律事務所E | 49回 | 0回 | 家族信託のみ |
測れた15ページのうち、両方の語が1回以上出ていたのは10ページ。片方が0回だったのは5ページだけでした。多くのページは、すでに併記しています。それでも検索結果は分かれました。
出現回数の多さも説明になりません。129回対2回と極端に偏ったページが両方に出ています。逆に25回対28回とバランスの取れた事務所は民事信託側だけ。表のDに至っては29回対1回で、ほぼ家族信託しか書いていないページが「民事信託」の検索に出ています。
本文に混ぜる、という対処では土俵は移らない。これが今回の測定から言えることです。併記しているのに片側にしか出ていないページが、10ページ中8ページありました。
AIが2つの語を別々に扱う仕組み(クエリファンアウト)
なぜこうなるのか。AI検索の内部の動きに、Googleは公式に名前を付けています。クエリファンアウトという手法です。受け取った質問を小さな質問に割り、割った単位で検索してから回答を組み立てる。この小さな質問がサブクエリ、検索して集めてから答えるやり方がRAG(検索拡張生成)です。
「親の認知症に備えたい」という相談なら、サブクエリは「家族信託とは」「民事信託 費用」などに割れます。走るのは統合された1つの検索ではなく、語ごとの別々の検索。前章の実測は、その状態を数字にしたものでした。
注意点があります。同じGoogleのドキュメントには、AI機能は「従来の検索よりも幅広く有益なリンクを表示できる」ともあります(Google検索セントラル「AI 機能とウェブサイト」)。通常検索の10位以内にないページが、AIの回答に引用されることはあります。
それでも語の壁は残ります。幅を広げる操作は、検索した語の中で行われるためです。表記を直したから引用される、という因果までは測れていません。確実なのは、2つの語が別々の土俵として動いていることです。
Before/After:どちらの土俵に出るかを先に決める
処方は「併記しろ」ではありません。狙う土俵を決めて、そこに1本立てることです。
本文の途中に、もう一方の語を混ぜる
「家族信託(民事信託とも言います)」と1か所添えて済ませる形です。15ページ中10ページがこれでした。読者への配慮としては正しいものの、測定した限り反対側の検索には出ていません。
狙う語を、タイトル・見出し・定義文に通す
民事信託の土俵に出たいなら、タイトル・H2・定義文の主語をすべて民事信託で通した記事を1本作ります。家族信託は本文で添える側に回す。土俵ごとに主役を入れ替える発想です。
着手の手順は4つです。
- いまどちらの土俵にいるか測ります。検索窓に
site:自事務所のドメイン 民事信託と打ちます。0件なら、その語で1本も出していないということ。3分で終わります。 - どちらの土俵で名前を出したいか決めます。一般の相談者なら家族信託、士業や金融機関との連携なら民事信託です。
- 狙う語を、タイトル・H2見出し・定義文の3か所に通した記事を1本作ります。定義文は、まず結論を1文で置く形が基本。この書き方がアンサーファーストです。
- 構造化データ(ページの意味を機械に伝える注釈)を使うなら、用語の型で書きます。
"about": {"@type":"DefinedTerm","name":"民事信託","alternateName":"家族信託"}のように、用語のかたまりの中で別名を示します。記事タイトルの別名欄では働きません。
併記そのものをやめる必要はありません。ただし1記事1〜2か所に留めます。全見出しに入れると読みにくくなり、狙った語の密度も下がるためです。見出しの設計はAIに引用される見出し設計で扱っています。全体の整え方は法律事務所AIO対策をご覧ください。
よくある質問
Q. 両方の呼び名で記事を2本作れば解決しませんか?
A. 内容が同じなら逆効果です。ほぼ同じページが2本あると、互いに票を食い合います。切り口を変えるなら2本でも構いません。家族信託は「親の認知症に備える」、民事信託は「他制度との比較」と分けます。
Q. 定義文はどう書けばよいですか?
A. 「民事信託(家族信託とも呼ばれます)とは、信頼できる家族などに財産の管理・処分を任せる仕組みです」。これが土台です。ここで示しているのは文の形であり、法律解説ではありません。正確さは各事務所でご確認ください。
Q. 直せば、すぐAIの回答に出るようになりますか?
A. すぐには変わりません。今回の測定でも、書き方と引用の因果までは確認できていません。効果は定点で見ます。月1回、同じ質問文をAIに投げ、事務所名が出たかを◯×で記録。質問文は変えないことが条件です。
貴社サイトがどちらの土俵にいるか。呼び名の分裂も含め、弊社が実際にAIへ質問して調べます。
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